園翁自伝(石油資源開発時代回顧録)(238)本社からの訪問者(8)若杉社長(続続続続)

さて若杉社長一行がパースに到着した時、本社でもどこでも全く見たこともない女性を伴っていることに気づいた。そんな話は本社から連絡を受けていなかったように思う。誰かと思えば、それは通産省の頃から何度も使ってきたという通訳だった。今まで世界各地で本社からの社長、副社長などの訪問を受けたが通訳を日本から帯同してきたのはこの若杉社長唯一人だった。日米自動車貿易交渉をしてきた人と聞いていただけに意外だった。

ともあれパースの石油鉱物省に出向いた。訪問先は大臣コリン・バネットである。この人はその後西オーストラリア州の首相になった。

会議室と思しき部屋に通された。訪問目的をビジネスの可能性、と通告してあるのだから意味のない表敬訪問に使う応接室などではない。入り口から見て左側に西豪州政府側、右手に石油資源開発側が着席する。勿論件の通訳は若杉社長の右隣に着席である。

挨拶の後、どんな案件の話になるかと期待に満ちた顔のコリン・バネット以下が身構える中で若杉社長が話し出したのは、石油の「セ」の字も関係しない「マイクロモーター」の話だった。「これからの時代は、マイクロモーターの時代になると思いますぅ」と語尾が間延びする独特の口調で延々と話す。政府側はいつそれが石油天然ガス開発のディールの話になるかと時間を気にしながら待っている。

結局最後まで、どこかの財界雑誌にでも載っていたようなマイクロモーターの時代の話だけで終わった。政府側もコメントのしようがなかったのだろう、通訳の英語が素晴らしいとほめそやしただけで会談は終わったのである(ほかに話題がなかった?)。交渉事なら間違いを防ぐためにプロの通訳を使うのも理解できないわけではないが、マイクロモーターというよもやま話に日本から通訳を伴う感覚は、民間にはありえないものである。それにマイクロモーターであるが、そういう話を石油鉱物省の大臣にするのがまた理解不能である。そんな役人生活を長い間経てきたということなのだろう。

 


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