プロジェクトの設立を目的とせず、商業価値を有する油ガス田を得るためには(4/8)間違ったインセンティブ制度を廃せ

識者のコメントに、改革の一つとして、

「上流会社と下流会社が統合して、試掘の失敗などは、税金で優遇する」

というものがある。

現在のJOGMECの投融資制度も同じではないかと想像するが、石油公団の投融資制度では、プロジェクトを失敗した場合、投資、即ち出資金が回収できないだけでなく、融資を減免するという制度になっていた。「負のインセンティブ」である。

競馬でも、自動車レースでも、プロレスでも優勝者にチャンピオンベルトや優勝賞金が授与される。勝てば栄光と実利が得られるのだ。「正のインセンティブ」である。アマチュアでもオリンピックでは金銀銅のメダル授与がある。それだけでなくメダリストには所属する国や企業などから賞金が提供される。どこの世界にも失敗したら得をするシステムなどないだろう。

失敗をした時の経済的ダメージを低減して次の投資を積極的にしてもらうため、との理屈をこねる連中がいる。勝負というものは背水の陣でするものだ。負けてもいいと言ったら強い選手など出てはこない。話は逆で、プロジェクトに成功したら、即ち利益を出し納税する企業になるのだから融資など免除してやる、との考え方の方が良い結果を生むのである。実際に其の制度の下で石油の探鉱をしてきた経験から言えば、プロジェクトの評価が甘くなるのが否めない。

出来るだけ、石油・ガスがない場所に基礎試錐のロケーションを設定するのと同じようなことになるのだ。意味のないプロジェクトでも投融資7割であれば、企業はたった3割の負担でそのプロジェクトにかかわるコストが賄えるわけだからだ。

同じ経済産業省が扱っている天然ガス探鉱補助金(名称はうろ覚え)は国内の天然ガス探鉱試掘井に適用されるが、こちらは試掘に成功し、その坑井から5年以内に生産を開始した場合に、補助金の返済の義務が生じる。つまり成功した場合には金を返せという政策なのだ。成功へのモチベーションが下がる政策である。実際には試掘に成功して生産するときには、5年間休止井としておいた後に生産する、つまり企業は補助金食い逃げ策を採用していた。勿論その状況を経済産業省は知っている。ひと言でいえば、癒着である。

そして、海外での探鉱プロジェクトにおいて、この負のインセンティブを利用するためにはワンプロジェクトワンカンパニーという最悪の選択が必要であった。

プロジェクトカンパニーを多数つくることは社長などの天下りポストを作る事であり、経済産業省の望むところである。それだけではない。プロジェクト会社はその夫々がエネ庁長官から担当課の係長クラスまで、中元・歳暮を贈るのである。つまりプロジェクト会社の数だけ中元・歳暮が届くらしい。

経済産業省の天下り社長から直接聞いたところでは、山のようになった中元・歳暮はデパートがトラックで引き取りに来て、換金してくれるのだそうだ。プロジェクト会社を乱立することによって1社あたりのギフト額を儀礼の範囲に分割するということを可能にしていると思われる。なんとも「コスイ」ことを考えるものがいるものだ。債権の証券化が参考になっているのかもしれない。

もう一点ワンプロジェクトワンカンパニー制には重要な欠陥がある。或るプロジェクトの損を他のプロジェクトの利益で回収することができないことだ。失敗のたびにその会社を清算してしまっては、損を別プロジェクトのコストに参入することなどできないのである。英国などはそれを認めた石油関係法になっているのだが。

書けばきりがないが、「負のインセンティブ」は石油鉱業人のモチベーションを下げるものなのである。現実に、有望なプロジェクトに於て石油公団の投融資を受けずに行う計画があったが、石油公団から叱られて投融資対象にしたことがあった。有望であれば、自社100%で取り組む方が良いのはビジネスの常識であろう。かくて有望プロジェクトの経済的な魅力が、この投融資制度のために薄れるという結果を知らなければならない。事業というものは、すればよいというものではなく、成功させねば意味がないものなのだ。役人の発想とは根本的に異なるものなのである。

台湾と異なり日本の閣僚は素人ばかりである。さらに悪いのは日本の役人も素人ばかりであることだ。民間との人事交流もない。冗談ではあるが、律令政治から進歩しなかったのかもしれない。

 


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