加藤良三の良心的「正論」

元駐米大使、すなわち元外交官だった加藤良三が産経新聞(1213日)の「正論」欄に「思い込みの外交はあり得ない」と題して一文を寄せている。その筆致は柔らかで上品で、同じ外務省出身でも元某情報分析官辺りとは月とスッポンの感がある。

題の意味を表面的に受け取ってはならない。そのありえない外交に現在の日本外交はなっていませんか、なっているではないか、との警鐘と受け取ってほしいものだ。冒頭は、

「現役の役人時代に先輩から共産主義体制国家の外交の常套(じょうとう)手段として、まず理不尽な既成事実を一方的に作りだし、交渉を長引かせ、その理不尽な既成事実を引っ込めて元に戻すのが恰(あたか)も大変な譲歩であるように見せかけて相手側から妥協を引き出すというのがあると教えられた」

である。私には、例えば北方領土問題であれば、「北方4島を返せ」と交渉するのではなく、「千島列島は日本の領土であるからまとめて返せ」とでも主張し、交渉の中で「北方4島の返還」まで“大きく譲って”北方4島の返還を実現すべきで、「たった2つの小島で結構です」などと目標の7%の要求しかしないなど、外交交渉のイロハすらわかっていない(経産)政権だと評しているように聞こえた。

「暗闇の中で僅かでも光が見えたらそれに引き寄せられるのは当然の心理だろうし、充満する悪の中に善の兆しが見えたら関心は持つべきだ。ただし、過大評価やのめりこみは禁物だろう」

これも現政権への警鐘のように聞こえる。

「昨今、日中関係の改善が喧伝(けんでん)されている。しかし、今後の香港情勢への対応は日本の「価値観」がいか程のものかを日本自身が測る機会になるだろう」

を読めば、香港の状況にも触れず、尖閣に押し寄せ、領海侵犯を恒常的に続ける中国に対し、「完全な正常軌道に戻った」などと、まともな頭脳なら言わぬことを言う、それこそのめりこんだ政府に注意を喚起しているように見える。

最終段の、

「筆者の現役時代にも、日本が世界の他の国々も(格別に良心的な国である)日本と同じような発想をするものだと思い込んであたかも鏡に映った自分と交渉しているがごとき体を示すことが間々あったように思う。これから先の世界情勢を見るとき、この種の「独り善がりの心情外交」は国に災いをもたらす所以(ゆえん)だと考える」

は、我が国政府の「独り善がりの心情外交」が国に災いをもたらすと大きな懸念を示しているのであろう。

しかし、この加藤良三の柔らかなトーンの批判、懸念、忠告など今の政権には理解できないのではないだろうか。もっと辛辣な表現が必要なように思う。

 


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