日本の存亡にかかわるとは大仰に過ぎるだろう

産経新聞(126日)の「正論」欄には「皇統の男系男子継承の深い意味」と題する竹内久美子の論説だが、ほぼ似た議論を以前にも「正論」欄で見た。論文の焼き直しと言っては失礼だが、時節柄某所から強い要請があって再掲した面があるのかもしれない。それは男系でなければY染色体が伝わらないという生物学的な原理に基づく男系男子が天皇を継承してきたという意義についてなのである。これ自体はすこぶる科学的であって何度も世に知らしめる必要があるだろう。しかし次が良くない。

「過去に女性天皇が10代8方存在した。それは次の天皇が決まらないか、次の天皇となるべき方が幼少のために中継ぎとして即位されただけ。どの方も未亡人か生涯独身を通され、天皇となってから子を産むことはなかった。よって女系天皇は現れなかったのである」

とあるがそれは事実か?明治以来の歴史教育でそういった、或いは『日本書紀』やそれを踏襲した『神皇正統記』にそう書いてあるのは事実だが、書いてある内容が事実かは「科学者の目」で見極めなければならぬ問題だろう。それなくしては明治以来の政権の政治的な歴史教育に盲目的に従うことを意味する。また、

「過去に藤原氏は多くの娘を宮中に送り込んだが、息子を送り込むことは一度たりともなかった。それは男系で皇統を継承していたからで藤原王朝が発生することがなかったのもそのせいなのである」

とあるが、天智天皇も天武天皇も藤原鎌足の子であり、持統天皇と元明天皇がその実は藤原不比等であり、藤原不比等の4人の子とその子孫だけが藤原氏を名乗ることとされ、そして歴代の皇后を藤原氏から出すことで、天皇も含めた藤原系で日本を支配する恒久システムを構築したのだ、との歴史を知れば、そんな奇妙な話は出てこない筈なのである。

例えば聖書を見れば、人間の発生にも、キリストの復活にも、その他にも多くの非科学的なことが書いてある。古い書物に書いてあることを事実として扱えるとなど思い込んでは真理など手の届かぬものだ。専門外の事には特段の注意が必要である。しかも、

「皇統の男系男子による継承は、かつては藤原氏などの国内の権力を排除するという意味があった。今、排除すべき権力はどれくらいの範囲に及んでいるだろうか。男系男子による皇統の継承は、日本国の存亡に関わる問題なのだ」

とあるのを見れば、どこからそんな結論が出てきたかが不思議であるばかりでなく、「日本国の存亡にかかわる問題」とは大仰に過ぎる表現である。ルイ王朝が消滅してもフランスは国であり続けた。エチオピアもしかり。汝、なんぞ国が滅びると言わんや。

竹内久美子らしくないものを見てしまった。

 


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