台風19号被害は「天災」である

産経新聞の「正論」と称するコラムに藤井聡が「台風19号自害は「人災」である」と題する、土木屋の利益誘導策提言のようなものが載っている。

まあ、安倍首相に近い学者であれば、「政商」ならぬ「政学者」(政治学者ではない)とも呼ばれるであろう人物だけに、土木屋が泣いて喜ぶような提言をしているのだ。学者と業者(そして政治家)との関係の深さのは原子力関係を始めとして普遍的に存在するように感じられる。この藤井聡の“正論”はぜひ読んでほしい。こうやって世論を誘導し、巨大公共事業を正当化し政策化し、業者に(巡り巡って政治家にも)利益が転がり込む、との構図が何となく見えてくるのではないだろうか。記事そのものは、

https://special.sankei.com/f/seiron/article/20191112/0001.html

で読める。

先日、人間は河川の氾濫で土砂が埋積を繰り返すことで出来上がった沖積平野に住んでいると書いた。特に大都市はすべて沖積平野にあると言ってもよい。即ち、もともと洪水を繰り返す自然環境の中に、利便性の観点から、人間が移り住んだのである。しかし洪水にたびたび見舞われては困るからと治水ということを行った。現代では巨大な堤防を作ることや、巨大な地下貯水施設を造ることばかりが提案されるが、伊達政宗は北上川の流路を変えたし、徳川家康は安倍川の流路を変更し、もっと昔には大阪の大和側川も大きく人工的に流路を変えている。治水という面からは大昔の方がはるかにスケールの大きい、抜本的な対策をとってきたのである。そこに土木業者の利権、その環境設定に寄与する学者などがいなかったためだろう。

地球規模で気候、気象が変化し、千年に一度の大雨が毎年襲ってくるようになったら、治水にかかる巨費がその効果に見合わなくなるのは目に見えている。沖積平野に都市を置くメリットが、その維持(治水)にかかる費用に見合わなくなった時には当然都市を移動させるべきである。中国の楼蘭は今はなく、インドのモヘンジョダロも消えて久しい。人は居住適地に住むべきで、いったん住んだらどんなに金をかけても居住不適地になっても住み続けるというのは馬鹿のすることである。

さて藤井聡は千曲川の例を挙げる。

「長野県の千曲川は決壊し大規模な洪水をもたらした。この決壊箇所は約1千メートルの川幅が200メートルにまで狭くなる箇所であり、専門家は豪雨時には決壊は免れ得ぬと認識していた箇所だった。にもかかわらず投資がなされなかったのは偏(ひとえ)に「オカネがない」という一点が理由だった」

元々人が居住し、街をつくるべき土地ではないとしながらも、どんどんカネをつぎ込めば治水はできると言っているようだ。でも治水予算には限りがある。青天井とするなら街を移動させた方が良い。現に東日本大震災の津波経験から、東北地方では海岸付近の住居も商店もが高台に移転しているのだ。

ところがこの藤井聡は、

「政府は国民の生命と財産よりも財政規律を優先するような、無慈悲かつ破壊的な財政運営を続けてはならない。しかも過度に財政規律を優先すれば、被害が拡大し、復旧復興予算が肥大化するとともに経済低迷による税収減にも苛まれ、かえって財政が「悪化」する。例えば今回荒川や利根川の決壊は免れたが、一つ間違えば10兆円以上もの「財政被害」が生じていたのだ。そう考えれば財政規律を優先する財政運営は無慈悲で破壊的であるばかりではなく、財政悪化を導く「愚か」極まりないものでもあるのだ」

と宣う。この話の飛躍には驚いた。治水費用には限度があるというのを打破するための詭弁だろうが、国民の生命と財産を守るため、いや実際には治水事業のために財政規律など気にせず無制限に税金を使え、と主張しているのである。この先生の方が「愚か」であることは明らかではないか。

こんな学者が政府に影響力を持つのだから、日本がだめになるのもむべなるかな。京都大学にも優秀なだけではない「立派な」先生がいたはずだが…

 


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