「異論暴論」というが、そりゃ違う。こりゃ「誤論」だ

107日の産経新聞のオピニオンのページに、月刊正論11月号の記事と思しきものが載っている。「異論暴論」というコラムでその題は「天皇と死者と鎮魂」で見出しは「正邪区別しない日本の宗教観」とある。冒頭を見てみよう。

「死者への鎮魂に対する日本人の宗教観は、正邪や敵味方を区別しない点で世界各国のそれとは異なる。西洋では敵対者を排除するし、中国では墓を暴きもする」

日本でも墓を暴いた例はあるようだ。例えば石舞台古墳だ。蘇我馬子の墓と言われる最大規模の古墳の盛土は完全にはぎとられ、環濠は埋め立てられている。古墳築造にも勝る労力をかけての剥ぎ取りなぞ、強い恨みなくしてありえないのではないか。天武天皇陵も暴かれたのではないだろうか。後世の人が盗掘だとしているだけではないのだろうか。日本人の宗教観を美化しようとの意図があるように感じる。第一日本人の宗教観とは何をイメージしているのだろうか。習俗的?仏教的?あるいは神道的?

さて敵対者を西洋では廃除するとあるのだが、日本でもその例はある。珍しいことではあるが。その例が、

「死者を区別しない日本の神道では、鎮魂の表現の仕方も他国と異なり、靖国参拝で政治と慰霊を「同一線上にまぜるのは野蛮である」とする」

で例示されている靖国神社そのものなのである。

靖国神社は戊辰の役での「官軍側」の死者を祀った東京招魂社が母体である。楠木正成の千早での戦いのときも鎌倉幕府方の死者を先に供養した。桶狭間の戦いでの信長も今川方の死者を手厚く葬った。旅順の戦いでは乃木希典将軍はロシア方の戦死者を先に葬った。

その中で戊辰の役を戦った薩長など、いわゆる“官軍側“は奥羽列藩同盟の諸軍の戦死者を祀らなかったのである。日本の歴史上まれにみる、日本人らしくない行動をとっている。士分ではなく卒分という身分低きものが主体であったためであろう。

その東京招魂社が靖国神社となったのちも薩長主体の明治政府は敵方を靖国神社に祀らなかった。大東亜戦争での戦犯も合祀したにもかかわらずに、である。死者を区別しないどころか、靖国神社こそ死者を敵味方で区別した例なのである。著者の見識を疑わざるを得ない。異論暴論ではなく「誤論」と断ずる理由である。

産経新聞系は左右の差はあれど朝日新聞と同様に、書きたい結論に合わせて論拠を作る傾向にある。あっ、それは安倍晋三政権も同じであったか。


コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< November 2019 >>

にほんブログ村

selected entries

archives

recent comment

  • 園翁自伝(石油資源開発時代回顧録)(88)人事考課を書き換えさせた石油資源開発人事部
    名無し (10/15)
  • 国際石油開発帝石(インペックス)は経営行き詰まりなのか?それを暗示する現象(2)
    名無し (08/20)
  • 園翁自伝(石油資源開発時代回顧録)(132)ホテル代の踏み倒し
    No use (07/25)
  • 論理の誤り―纏向遺跡と桃の実の年代
    No use (07/24)
  • (続)石油資源開発の新役員布陣が発表されたが―身体検査は大丈夫か?
    No use (07/24)
  • 『人麻呂の暗号と偽史『日本書紀』〜萬葉集といろは歌に込められた呪いの言葉〜』を電子出版化した
    ふひと (07/11)
  • 国際石油開発帝石のイクシスプロジェクトは「大失敗」?!
    高松 和弘 (06/27)
  • 起きる確率の高い南海トラフ地震の被害額が1,400兆円以上と言うなら
    toshi (06/14)
  • 決裁文書の事後改竄は単なる文書管理の問題ではない
    giinnokoe (06/01)
  • (続)石油資源開発の新役員布陣が発表されたが―身体検査は大丈夫か?
    名無し (05/28)

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM