これぞ知性の香り高き正論である

820日の産経新聞の「正論」欄に掲載されたのは佐伯啓思の「戦後74年、矜持を失った保守」である。その内容は、文章の展開とともに素晴らしいものである。まさに一流の教養人の手になるものといえる。交声曲「海道東征」が演奏されれば「日本文明の復活」と騒ぎ、「海ゆかば」が鎮魂の歌だと主張する某氏の”正論”とは月とスッポン、雲と泥の違いがある。佐伯啓思「正論」は以下で全文が読める。

https://special.sankei.com/f/seiron/article/20190820/0001.html

さて、佐伯啓思の論点を見ていこう。佐伯はまず、西部邁氏の若かりし頃のエピソードを示す。

「西部氏が東大に入学し、同時に共産党にも入党した時のことである。…若き西部氏も和歌山の山中の被差別部落へ赴いた。…帰り際に西部氏は、子供たちにアイスキャンディーをふるまおうとした。しかし子供たちはそれを受け取らなかった。子供たちからすれば、西部氏は東京からやってきたエリートである。自分たちは、社会のどん底にいる。しかし乞食(こじき)ではない。ものを恵んでもらういわれはない、というのだ。」

「和歌山の子供たちが示したのは食えなくても守らなければならないものがある、というぎりぎりの矜持(きょうじ)であり、真の誇りであった。」

そうだ、乞食になってはならぬという人間の最低限の誇りを西部はそこで見たのである。しかし、佐伯啓思は次のように続ける。

「そして戦後日本は、豊かさと平和の代償としてこの矜持を失った。少しでもカネを手にしようと福祉に群がり、利権をもとめて政治家と繋(つな)がろうとし、自己の立場が少しでも不利となれば権利の平等をたてに大声を張り上げる、そして政府に何とかしてくれ、と訴える戦後日本人の姿は醜くゆがむ。」

私が常々指摘している、官邸に近づき、安倍晋三首相他の権力者を利用しようとする輩の存在である。政権との癒着雑誌、癒着新聞と記者、癒着ジャーナリストに癒着作家、そしてお友達など類を挙げればきりがない。そしてそこには独立自尊の精神など全く見受けられない。さらに佐伯の評価分析の対象は日本の保守政治家に及ぶ。

「先日の、トランプ大統領による(戦略的な思い付きとはいえ)安保条約の破棄発言に際しても、日本の防衛についても日米同盟についての論議も起きないのでは、「保守」など消滅したというほかない。平和が続き経済が豊かになればかつての山村の子供にあった、カネや食べ物よりも大事なものがあるという矜持も薄れるであろう。」

と、かつての山村の子供の矜持すら持ち合わさないと指摘する。そして次のように結ぶ。

「カネをばらまいて株価を上げ、訪日外国人がいくらカネを落としてくれたと喜び、日米関係の強化で平和を守れればよいという「現実」をそのまま擁護も賛美もするわけにはいかないのが「保守」であろう。令和元年は戦後74年である。この時代は、ほんとうに「保守」が問われる時代となろう。」

すなわち、株価を操作して経済をよさそうに粉飾し、訪日外国人のもたらす(弊害に目をつぶり)カネだけに注目し、日米関係の強化との表向きの言葉で隷属関係を誤魔化しているようでは本当の「保守」でなどではないと指摘しているのだ。

この正鵠を射た指摘に対し、“保守党”政治家から声の上がらぬのが真の「保守」ではない証拠なのかもしれない。

保守の衣や革新の衣を着て、金と権力に群がるのを見れば、保守も革新も金儲けのための方法の一つとしか言えまい。それが証拠に、細野豪志を筆頭に政党も政策もどうでもよいという国会議員が実際に存在するではないか。恥ずべきことである。

 


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