乃木希典を想う

産経新聞に「歴史に消えた歌」なる連載コラムがある。7月17日は「ノーサイド『水師営の会見』」という題である。「旅順開城約なりて敵の将軍ステッセル乃木大将と会見のところはいずこ水師営」に始まる歌に就てである。日露戦争における203高地争奪戦という双方で6万人ともいえる死傷者を出した歴史に残る戦闘の終結、ロシア軍の降伏時の会見の様子を歌にしたものだ。ついでながら203高地は眼下に旅順港を見下ろす旅順要塞の要地なればこその死闘であった。

この歌は熟知している。幼いころ父が歌うのを真似てよく口にしたものだった。産経新聞のコラムにいわく、

「1枚の写真が残っている。世界各国の従軍記者の求めで撮影されたものだ。日露両軍の首脳が「友人」のごとく、くつろいだ様子で肩を並べている。乃木は日本軍よりも先に露軍戦死者の墓所をつくり、ステッセルは愛馬を贈った。勝っておごらず、敗者をいたわる−おびただしい犠牲者を出す死闘を繰り広げた後の両軍の将の会談の様子は世界に打電され、称賛を集めたのである。」

敵の慰霊を自軍に先行する、これこそ武士道であろう。乃木希典は長州藩の支藩長府藩のれっきとした藩士(馬回り役、80石)の家に生まれたために武士道をわきまえていたと言えよう。ところが戊辰の役での官軍の幹部は士族ではなく卒族(足軽など)が主体であったために武士道に不足があった。靖国神社の母体は「官軍東京招魂社」であり、戊辰の役での官軍側だけの戦死者を祀ったもので、奥羽列藩同盟などの敵軍の戦死者は祀られていない。それは明治12年に靖国神社と改称されてからも変わらない。そこに明治政府の中心にいたものが真の士ではなかったことを意味するのである。そしてその心の狭さは現政権にまで続いている。それ故に私は靖国神社を参拝しないと決めている。

さて、乃木希典とは多少のかかわりがある。我が曽祖父、島野翠は戊辰の恨みを晴らさんと、多くの旧会津藩士たちとともに西南戦争に参加した。そして乃木希典の隊に配され、有名な熊本県の田原坂などの戦いで薩摩軍に切り込みをかけたのである。

また母方の祖父、高木三郎は乃木希典の長男、勝典の親友であった。幼時より乃木邸で相撲を取ったが、どんなに暴れても叱られなかったという。やがて勝典が旅順攻略戦に向かうときに、「今度の戦では生きて帰るわけにはいかぬ。高木、靖国で待っている」と言い残して出かけた、と聞いた。その祖父の最後の言葉は「乃木が待ってる」というものだった。死の間際の祖父の目には乃木勝典が映っていたのだろう。

乃木希典は降伏する敵将ステッセルに帯剣を許した。それを知っていたからか我が父、雄三は仏印においてオランダ軍3千人の降伏に際し、敵の指揮官(多分、シャトー大佐)に実弾入りの拳銃保持を認めたと聞く。また尊敬からであろう父の結婚式は乃木神社で行われた。

 


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