引きこもり長男を父親が殺害したのに産経新聞がレバ・タラ論

練馬区で引きこもりの44歳の長男をその父親が殺害した事件が起きた。殺害した父親が元農林水産次官だったことから世間の注目を浴び、いやメディアが本来父親の元職など何の関係もないのに繰り返し報道して世間の注目を浴びさせたというべきだろう。

この事件につき産経新聞はその社説(主張)で取り上げている。そして三流ワイドショー並みに「元次官が長男殺害  悲劇は避けられたはずだ」なるタイトルを付している。現職の経済産業省職員が何年も前から、しかも経済産業省内で覚せい剤を使用していたという時代である、また現役の財務省職員が決裁文書の決済後書き換えという違法行為をしておいて悪びれもしない時代である、元農林水産次官と書き立てるほうに理性が不足している。

色々経緯、事情に触れたのちに、

「こうした事情から容疑者に同情的な見方もある。だが殺害に及ぶ前に、できること、やるべきことがあったはずだ」

と書いている。

しかし産経新聞よ、そうだろうか。当事者でもないものが、それも実の父親が実の子(44歳の長男)を殺害するという稀有の事件に”評論家然”としたコメントしてよいものか。そこに至る前に、考え悩みを随分繰り返したはずだ。そして最終的に得た結論が殺害だったのである。勿論理由はどうあれ殺人であることに変わりはない。自らが刑務所に入ることも、残された妻が世間から指弾されながら生きていく地獄の苦しみもわかったうえでのことである。しかも殺害については妻(長男の母親)にも伝えていたという。父親だけの考えではなく、母親も知っていての殺害なのだ。その決断の背後の絶望感、悲しさ、苦しさは察するに余りある。誰がその父親を非難できるというのだ。

「引きこもりの相談窓口は「ひきこもり地域支援センター」などにある」、また、「家庭内暴力はすでに犯罪であり警察や関係窓口に相談すべきだった」、さらに「医療機関の診断を経て精神保健福祉法に基づく「措置入院」とすることも考えられた」とも言う。しかし児童相談所に相談をした例でも親による子供いじめ殺人を防げなかったではないか。警察が聞いたとしても行動しなかった例は枚挙にいとまがない。すなわち信頼できる機関とは言えないのである。「二度とこういうことが起こらないように」などというのは役人の不祥事につきものの言葉であって、さして意味のあるものではないのである。誤解を恐れずに言えば、元農林水産次官という学識も良識も持った人でさえこの選択をしたのであるから、産経新聞の主張が説く方法が如何に無力か、信用されていないかの現実を知り、それをどう改善するかに言及すべきなのではないか。

さて同じ産経新聞の63日の記事に、「中高年引きこもりなぜ?」というものがある。私は、引きこもりが成立するには引きこもり場所と、日々の糧を提供するものの存在が不可欠な点を強調したい。つまり一種の甘やかしである。天涯孤独なものは引きこもりになどなれないのである。誰も助けなければ餓死するのではないか、というかもしれない。しかし同記事の中で、岐阜県立希望が丘こども医療福祉センター発達精神医学研究所の高岡健所長は、

「単身生活をしていて蓄えがなくなれば、餓死する最悪のケースも考えられるが、そんな例はほとんど聞かない。引きこもりになるのは余裕が残っている場合が多い」

と語っているのである。

子供の教育とは一人で生きていく術を与えることである。盲愛、溺愛が子を駄目にし、親の不幸をも生じるのではないだろうか。

 


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