非科学的に過ぎませんか、平川祐弘の“正論”?

平川祐弘なる東大名誉教授が産経新聞(530日)の「正論」欄に寄せた一文のタイトルは『李王殿下と日韓関係の「盲点」』というものだ。

東大の現役教授の時からこの程度のものを書いていたのかとやや訝るが、国家基本問題研究所理事と聞けば、こんなものかと納得できるような気がする。およそ科学的思考とは縁遠い方のようだ。まず冒頭を取り上げよう。

「新天皇の令和の御代(みよ)となった。めでたい。万世一系の天子をいただく国に生まれてよかったと多くの人が参賀に集まった。個人の命は有限だが、百二十六代の天皇家は、古風にいえば天壌無窮(てんじょうむきゅう)、日本国民の永生の象徴として天地とともに窮(きわ)まりない」

「わが国には文字がなかった」(蓋聞 上古之世 未有文字 貴賤老少 口口相傳 前言往行 存而不忘)と『古語拾遺』で斎部広成が書いたから、「古代日本には文字がなかった」と断ずるのと同じ誤りを犯していぬのに気が付いていない。「万世一系」は室町幕府にも疑問視されているのを、北畠親房が「神皇正統記」で一系だと言い張ったけれど、だからと言ってそれを事実とするのは愚者である。学者・研究者としての大きな基本問題を抱えているようである。新天皇の即位の時に「万世一系の天子をいただく国に生まれてよかった」と感じて多くの人が参賀に集まった、とは単に平川の個人的思い込みである。その数も14万人と報じられたが、日本国には1億人以上、東京都だけでも約1,400万人の人が居住するのである。だから何だというのだろう。参賀者が全員東京都民だと仮定した場合には、参賀に来たのが1%、来なかったのが99%なのである。事象の基本的とらえ方が間違っているように感じる。

さて対句というものがあり「萬葉集」における柿本人麻呂の長歌などに多用されている。この平川祐弘の文章は対句に見せて対句ではない。「個人の命は有限」と「天皇家は天壌無窮」という対にならぬものを並べている。故人の命も天皇の命も有限であろう、天皇家という家系が無限なら、だれの家系も無限である。親なくして子は存在せぬのだから。論理的思考という面で問題ありと感じる。

「私たちは家族として先祖を敬い、国民として天照大神(あまてらすおおみかみ)を祖神とする天皇家を尊ぶ」

平川祐弘個人がどう考えようと勝手なのだが、それを単純に「一般化」して書くのはいかがなものか。

「国のために死んだ者は陛下の祈りにより慰霊される。死者と生者は、陛下の祈りにより結ばれる。そんな日本の過去と現在の統合の象徴だからこそ陛下には、権力はないが、権威が有る」

これも平川祐弘の個人的意見、あるいは願望なのだろうが、この意見では「国のためにではなく死んだ者は陛下の祈りの対象ではない」と理解される。では「国のため」か否かはだれが決めるのか?「死者と生者は、陛下の祈りにより結ばれる」に至ってはもはや妄想の域か。

「大陸から仏教が伝わったとき、固有の宗教文化を護持する勢力と大陸文化の受容を進める勢力が争ったが、聖徳太子は憲法第一条で「和ヲ以テ貴シト為ス」を国是とされた。今日の言葉でいえば神仏共存の宗教的寛容である」

これも問題だらけだ。聖徳太子の十七条憲法の一番目の冒頭は、

「一曰、以和爲貴、無忤爲宗。」である。神仏共存の宗教的寛容などではない。「逆らう事なきを旨とせよ」というところを知らぬとしか思えない。

また聖徳太子は宗教対立の末に物部守屋を滅ぼした蘇我馬子側に参加し、渋川の物部氏の本拠地の攻撃に参加しているのである。何が神仏共存か。

思い込みと誤りの塊のような内容に、平川祐弘の記事など読まぬほうが良いと感じた。よってこれより先の記事へのコメントはしない。

 


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