こじつけではないか、老中国古典学者

「令和」なる安倍晋三首相お気に入りの新元号の本意は、聖徳太子の十七条憲法の一、「一曰。以和爲貴、無忤爲宗。」すなわち、「和を以て貴しと為し、忤(さか)ふること無きを宗とせよ」(太字下線は筆者)が意図するところの「「和」を令(命)する」であろうと5月2日のブログに書いた。

この「令和」を「萬葉集」と言う国書から採ったと民族主義的恍惚感に浸っているようにも見えるが、元号制度そのものが中国産なのだから、出典が国書などと言ったってバカみたいな話ではないか。また、『萬葉集』の中の序は萬葉仮名での和文ではなく漢文であり、さらに出典とされた部分は『文選』の中の「帰田賦」を踏んでいるとの指摘が多く寄せられたという。ちなみに、後漢の張衡の帰田賦の該当する部分は、
「於是仲春令月 時和気清」

と言うものである。

さて、産経新聞(5月12日)には老中国古典学者、加地伸行が「個展古典 まだある「令和」の出典」として寄稿している。中国古典学者として何か言わずにいられなかったのだろう。(従来から屁理屈的な反論、対論を好む方のようだ)

そして「帰田賦」の出典はと求めての例文を列記し、

「令和は『萬葉集』を出典とし、同個所は『文選』を出典とし、それはさらに経書の『儀礼』『周礼』などを出典とするという話になってゆく」

と書く。安倍政権の言う、国書がどうのと言う説明の浅薄さが明白だろう。

しかしその後がいけない。朝日新聞が中国哲学研究の衰落と書いたことに「むっと」したかのように加地伸行は書いてしまったのである。生来の性格か、高齢の故か、我慢ができなかったのだろう。

「では腕試しに”御用学者殿“に豪速球を一つ。打ち返せるかな」

と精神状態むき出しの表現をしたうえで、『礼記』の月令を紹介する。

「その年始の1月において、民に対して「徳を布き、令を和らげ…(略)」とある。原文中の和令を取り出して訓読すると「令を和らぐ」すなわち「令 和らぐ」、すなわち「令和」ではないか」

と書いてしまった。

月令の当該部分の原文は、

「立春之日,天子亲帅三公、九卿、侯、大夫以迎春于郊。反,公卿、侯、大夫于朝。命相布和令,行施惠,下及兆民。庆赐遂行,毋有不当。乃命大史守典奉法,司天日月星辰之行,宿离不,毋失经纪,以初常。」

である。見ての通り加地伸行の言う「民に対して」ではない。「布和令,行慶施惠」を相(宰相)に対して命じたのである。そしてそれを「下は兆民に及ぼせ」と命じているのである。

もう一つ。和令の令は律令の令であり、法令のことである。法令を和らげるとはどういうことか。法令を緩めるという意か。違うのではないか。和には従うとの意味がある。だからここは「徳を布き(徳を施し)、令に和せ(法令に従って不公平なく対応せよ)」と解するのが良いのではないか。

さらに言おう。「和令」を読み下せば「令を和らぐ」だから「令和」だとは、もはやこじつけ以外の何物でもない。こんなことを言い始めたら中国古典学者失格であろう。ブレーキとアクセルを踏み間違えて事故を起こす高齢者が後を絶たない。それと同様にこれは老中国古典学者が起こした“事故”のようなものである。免許証は返納したほうが良いだろう。老醜は見せぬほうが良いものではないか。それにしても自身は御用学者ではないと思っているように見受けられるが、疑問に感じる人は多いのかもしれない。

 


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