園翁自伝(石油資源開発時代回顧録)(187)鉱区ブローカーの手引きをする元高級役人、その2

書類が乱雑に積まれた小部屋の中には作業テーブルが1台、そしてその周りには椅子が6脚ほど置かれていた。村上世彰課長補佐、私、記録係の開発課員の3人が片側に座り、向かい側には3人の男が座った。どのような連中が来たのかを私は知らない。名刺交換が始まった。参加者は、三宅和助、関章一、新井恒伸だった。三宅和助は、北海道の夕張出身の元外務官僚である。中近東アフリカ局長、駐シンガポール特命全権大使などを歴任し、その後は中東調査会理事長を務めたという中東に詳しい人のようだった。この三宅和助の娘が元衆議院議員、三宅雪子だそうだ。関章一はでっぷり太った男で、正体は不明だった。もらった名刺には「燃えて国政へ!!」とあるだけで、組織名も役職名も記載されていなかった。ただ事務所住所は葛飾区亀有になっていた。新井恒伸は(株)島藤の代表取締役社長であった。その会社の住所は新宿区四谷となっていた。

村上課長補佐が口を開いた。

「先生、お忙しいところをわざわざお越しいただいて…。今日は石油資源開発から専門の方にも来ていただいておりますので遠慮なくご質問いただければよいと存じます」

三宅和助が用件を簡略に話した。地元北海道の夕張付近の山林の中で石油の試掘に成功した。その鉱区の評価について意見が欲しい。そういう切り出しだったが、これはその土地なり鉱区を買い取れという話だとすぐに分かった。

新井恒伸が写真を取り出した。林の中で車載型のボーリングマシンで井戸を掘っている様子が写っている。それを見た村上課長補佐が、

「先生、石油の掘削は鉱業権なしにはできないことになっていますし、いろいろな手続きも必要ですので、石油の試掘をしたとは決して発言しないようにしてください」

と言った。

「このエリア(鉱区)、油田の評価を聞かせてもらいたい」

ついに来た、と感じた私は、

「鉱区の評価ですが、石油資源開発は北海道の鉱区をかなり保有しています。それは会社としての評価に基づいて取得したものです。他者の鉱区についてはそれぞれの会社に独自の評価があって当然だと思います。ただ、当社がその鉱区を保有していないという点から私どもの評価をお察しいただけると思います」

と答え、さらに、

「油田というのは商業性を持つものに対して用いる言葉です。試掘に成功した場合には通常それを“発見”と呼びます。発見についての評価は、地質学的データを含め多くのパラメータを必要といたしますので、他者のものについてならなおさらのこと、安易に申し上げられません。専門のコンサルティング会社がございますのでご相談なさってはいかがでしょうか」

と答えた。すると今度は、

「苫小牧の方でのガス田をお持ちですが埋蔵量はどの程度ですか」

との質問が来た。それに対しては、

「ガス田の埋蔵量は企業機密です。お教えするわけにはまいりません。しかし、ガスパイプラインに関する知識をお持ちと先ほど伺いました。そうであるならば、苫小牧(勇払)から札幌までの当社のパイプラインの長さも径も公表していますので、それらからある程度推定可能かと存じます」

と返答し、それらも含めすべての質問を正面で受けずにかわしたのである。(続く)

 


コメント
コメントする








   
この記事のトラックバックURL
トラックバック

calendar

S M T W T F S
    123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031
<< August 2019 >>

にほんブログ村

selected entries

archives

recent comment

  • 園翁自伝(石油資源開発時代回顧録)(88)人事考課を書き換えさせた石油資源開発人事部
    名無し (10/15)
  • 国際石油開発帝石(インペックス)は経営行き詰まりなのか?それを暗示する現象(2)
    名無し (08/20)
  • 園翁自伝(石油資源開発時代回顧録)(132)ホテル代の踏み倒し
    No use (07/25)
  • 論理の誤り―纏向遺跡と桃の実の年代
    No use (07/24)
  • (続)石油資源開発の新役員布陣が発表されたが―身体検査は大丈夫か?
    No use (07/24)
  • 『人麻呂の暗号と偽史『日本書紀』〜萬葉集といろは歌に込められた呪いの言葉〜』を電子出版化した
    ふひと (07/11)
  • 国際石油開発帝石のイクシスプロジェクトは「大失敗」?!
    高松 和弘 (06/27)
  • 起きる確率の高い南海トラフ地震の被害額が1,400兆円以上と言うなら
    toshi (06/14)
  • 決裁文書の事後改竄は単なる文書管理の問題ではない
    giinnokoe (06/01)
  • (続)石油資源開発の新役員布陣が発表されたが―身体検査は大丈夫か?
    名無し (05/28)

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM