靖国はもともと薩長の招魂社、その性格は今も続いている

産経新聞(3月25日)の「iRONNA」欄に靖国神社に関する一文を島田裕己が「『天皇御親拝ゼロ』の衝撃」との題で寄せている。戦に斃れたものの鎮魂社であるならば、外国との戦争ならいざ知らず、日本国内の戦争であれば敵味方双方を祀るのが日本古来の常道である。産経新聞に現在連載中の楠木正成も千早赤阪上での戦いの戦死者を厚く弔った。しかも敵方の慰霊塔のほうが立派という心遣いを見せている。そしてこのような敵方の死者も厚く祀る一種の礼儀は日本の武士の基本的な態度であった。しかるに、靖国神社には戊辰戦争・明治維新関係で7,751柱が祀られているが、それらは政府軍側のものだけであって、旧幕府軍や王府列藩同盟の戦死者は祀られていない。まことに武士道を知らぬ薩長の”田舎”ものの振る舞いが明白である。もっとも戊辰戦争や明治維新の主体は士族ではなく、足軽レベルの卒族のものだったのだから知識、教養の不足は当然だったのであろう。そしてその状態は現在に至るまでも続いているのである。ちなみに西南戦争での西郷軍の戦死者もこれまた祀られていない。敵となったものへのリスペクトを持たぬ薩長の特徴が良く出ている。

さて靖国神社成立の歴史だが、ウィキペディアの記事を引用しよう。

「戊辰戦争終戦後の慶応4年旧暦62日(1868721日)に、東征大総督有栖川宮熾仁親王が戦没した官軍(朝廷方)将校の招魂祭を江戸城西丸広間において斎行したり、同年旧暦510日(629日)に太政官布告で京都東山(現京都市東山区)に戦死者を祀ることが命ぜられたり(現京都霊山護国神社)、同旧暦710827日)・11828日)の両日には京都の河東操錬場において神祇官による嘉永6年(1853年)以降の戦没者・殉死者を慰霊する祭典が行われる等、幕末維新期の戦没者を慰霊、顕彰する動きが活発になり、そのための施設である招魂社創立の動きも各地で起きた。それらを背景に大村益次郎が東京に招魂社を創建することを献策すると、明治天皇の勅許を受けて明治2年旧暦612日(1869720日)に現社地での招魂社創建が決定され、同月29日(86日)に五辻安仲が勅使として差遣され、時の軍務官知事仁和寺宮嘉彰親王を祭主に戊辰の戦没者3,588柱を合祀鎮祭、東京九段上に「東京招魂社」として創建された。」

これからもわかるように薩長(戊辰戦争政府軍)が自軍の戦死者だけを祀ったいわば私的なものだったのである。それを日本という国家の神社とするならば、旧幕府軍や奥羽列藩同盟の戦死者を合祀しなければならないのだが、それをせずに今に至るのに対する批判をするほうが靖国神社への天皇の参拝を残念がるより先ではないか。一般国民は知らずとも、宗教学者だというこの島田裕己はそれを熟知しているだろうに。記事の中で島田裕己が言う、

「国の機関であった靖国神社が民間の機関になったことに最大の問題があり、また矛盾がある」

も靖国神社の歴史と内容からは「違うなあ」と言わざるを得ない。戊辰戦争における政府軍側(薩長)の戦死者だけを祀る、いわば薩長村の墓をその内容不変のまま、国家施設にしたことのほうが問題なのである。

こんな意見を言う”宗教学者”が存在するところに、戦後75年になんなんとする今日も明治以来の薩長門閥政治の継続が見えるようである。「人は生きるために食うのであって、食うために生きるのではない」との名言があるが、「書くために食うのであって、食うために書くのではない」とは真逆の輩のなんと多いことか。4月3日に書いた、『無償の功名』に思いを致すべきである。もっとも、それができるくらいならこんなものは書かぬだろうが。

 


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