新元号「令和」選定への安倍晋三首相の関与は?

4月1日に新元号を発表した菅官房長官は、新元号の考案者や決定前の原案を明らかにすることは適当でないとし、公表しなかった。「平成」の決定経緯もいまだに公表されていないくらいだ。しかし4月3日には、有識者会議に提示された候補名も、選定経緯も新聞に掲載されている。誰かが、選定の様子に”大きな疑問”をもってリークしたのか、あるいは政府が自らリークの形で国民にまことしやかな話を提供したのかのいずれかであろう。週刊誌もそろって本件に触れている。そういえば4月1日の午後に発表されたにもかかわらず、翌2日の産経新聞の「正論」欄には笹川陽平が「国書による発元号に大きな意義」との題で、以前から用意していたかのごとき素早さでまとまった一文を寄せているのを見れば、すべては政府が書いたシナリオ通りに進んでいるのかとの感がしないでもない。

さて4月3日の産経新聞一面の記事を要約すると、

第一段階:国文学、漢文学、日本史学、東洋史学の分野の専門家が考案し、歴代政権が極秘に受け継いできた60〜70の元号案から菅官房長官を中心に20程度に絞った。(すでにあった元号案からの絞り込み。実施者:菅官房長官)

第二段階:3月上旬に5案(英弘、久化、広至、万和、万保)を含む1ケタ台に絞り込んだ。実施者???

第三段階:この時点で国書由来の案をさらに出すように中西氏らに依頼することを指示。実施者:安倍晋三首相

第四段階:中西氏らが3案を考案、提示。

第五段階:3月最終週に安倍晋三首相が追加3案から「令和」のみを選んで、その時点で候補として残っていた(選考者:不明)5案に加えて6案とした。

そして有識者会議、全閣僚会議というセレモニーを経て、最後に安倍首相が「「令和」で決めます」と決定した。

この流れを見れば、候補案に、安倍晋三首相の好みの元号案を追加させ、最終的にそれに決定したということが分かる。そんな安倍首相の気持ちを耳打ちされれば「令和」に反対するものなど出てこないことは誰でもわかろう。しかし漏らさぬはずの選定経緯が漏れてくるのは、安倍首相の関与を世に知らせるべきとの考えを持った人がいたとも推察できる。河北新報(4月4日)の記事では有識者の会議の冒頭に政府側が「国書からの選定には大きな意義がある」と強調したともある。極めて誘導的だ。識者のどうのが、選定プロセスに問題がないことにする隠れ蓑になっていることがわかろうというものだ。加計学園の今治への獣医学部設立での特区の会議などと似たようなものだったのだろう。また中西氏は新元号発表後なら取材に応じるとしていたが、急に応じられなくなったと拒絶に転じたとのことだ。真実を知られて困るのは政府側だけなのだから、“圧力”が加わったということなのだろう。

さて4月2日のブログで触れた、歌における「和」であるが『懐風藻』での例は

正五位下陰陽頭兼皇后宮亮大津連首 二首 [年六十六]
五言 和藤原大政遊吉野川之作。[仍用前韻]

というものであり、深い意味は持たぬようだが、「令和」の出典となった『萬葉集』での例は意味深である。題詞に「和す」と明記されている『萬葉集』第二巻の相聞歌111番と112番を引用しよう。

「111番」

[題詞]幸于吉野宮時弓削皇子贈与額田王歌一首

[原文]古尓 戀流鳥鴨 弓絃葉乃 三井能上従 <鳴><濟>遊久

[訓読]いにしへに恋ふる鳥かも弓絃葉の御井の上より鳴き渡り行く

「112番」

[題詞]額田王奉和歌一首 [従倭京進入]

[原文]古尓 戀良武鳥者 霍公鳥 盖哉鳴之 吾<念>流<碁>騰

[訓読]いにしへに恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きし我が念へるごと

これらの本当の裏の意味については拙著『萬葉伝授』(キンドル版)に譲るが、弓削皇子、額田王の歌はともに主題は「古尓 戀流鳥」「古尓 戀良武鳥」、つまり古(古き)を慕う鳥である。明治復古或いは戦前復古の傾向の強い安倍晋三首相にぴったりの主題なのだ。そして額田王はその鳥を「霍公鳥」すなわちホトトギスだとする。ホトトギスは杜宇の故事から「不如帰」とも表記され、これは『帰るにしかず』と読める。つまり「帰るのが一番」、換言すれば「復古が一番」ともなろうか。さすが万葉集の専門学者だけのことはある。安倍晋三首相の心情、フィロソフィーを見事にとらえたのではないだろうか。

名前には命名者の深い思いがこもるものである。通り一遍の説明など、後付けであることのほうが普通だ。こんな考察だが、参考になればと書いてみた。

 


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