令和の意味を考える

新元号が「令和」に決まったとのこと。先に決めておいて、麗々しく有識者に諮るとの形式的ステップを踏んでの発表であろう。「平成」の元号発表は小渕官房長官によってなされた。今回は同様に菅官房長官による発表だが、とにかく目立ちたがりで、手柄重視の安倍晋三首相ゆえになんと首相会見まで行われた。3月29日に自民党の吉田博美参院幹事長が同党参院議員総会で、片山さつき地方創生担当相に対して「『自分が、自分が、自分が』ではなく、『感謝、感謝、感謝』の気持ちで頑張っていただきたい」と求めた」と報じられたばかりだが、自民党トップの安倍晋三首相は自分に対する言葉ではないとしたのだろうか。

さてその安倍晋三首相は「令和」との元号には「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つという意味が込められている」と述べたそうである。はて不可解な。どうしてそのような意味になるのか解説が必要だろうと言いたいが、おそらくそんな意味などないのであろう。

「令和」の出典は『萬葉集』巻五の「梅花歌卅二首[并序]」、すなわち、

天平二年正月十三日 萃于帥老之宅 申宴會也 于時初春令月 氣淑風和 梅披鏡前之粉 蘭薫珮後之香 加以曙嶺移雲 松掛羅而傾盖 夕岫結霧 鳥封縠而迷林 庭舞新蝶 空歸故鴈 於是盖天坐地 <>膝飛觴 忘言一室之裏 開衿煙霞之外 淡然自放 快然自足 若非翰苑何以攄情 詩紀落梅之篇 古今何異哉 故而賦之于園梅 聊成短詠也

であるらしい。となれば「令和」の「令」は「令月」からとり、「和」は「風和」からとったのだろう。「令」は「よき月」との用例からここでは形容詞であり、「和」は「風やわらぐ」の用例から動詞であることが分かる。形容詞は動詞を修飾できないから「令和」では少し用法を工夫する必要があろう。

「令」は形容詞の「佳い」以外に漢文ではおなじみの「○○せしむ」との用法がある。「和」が動詞なので文法的にも問題がない。

「和」の意味には和らぐといったものもあるが、漢詩における特別な意味がある。それは、

「他人の詩と同韻の字を用いて詩を作る」

という意味で、日本最古の漢詩集『懐風藻』にも、藤原不比等の漢詩に和して作った詩が採録されている。『万葉集』にも「○○に和して詠む」との表現が多く認められる。とここまでくれば、「令和」には深い意味が隠されていることが分かるだろう。「和せしむ」となれば、「多くのものに賛同させる」「多くに支持させる」果ては「逆らわせない」といった意味になるではないか。時の総理大臣が千載一遇の好機到来と、個人的願望を含んだ元号を制定することは、あっておかしいことではない。なればこそ前例を破って敢えて記者会見を開いたのかもしれない。裏読みが過ぎるだろうか。

子供への命名にも、親の気持ち、願いがこもるものだ。本の題名にも、ペンネームにも何かの意味が含まれていることが普通だ。表面的には見えない隠された願望を読み取るのも楽しいのではないか。きっといろいろな「読み」が出てくることだろう。

さて、ここまでは昨日、4月1日の新元号の発表を受けて書いたものである。本日の産経新聞に産経新聞の言う“識者”のコメントが掲載されていた。その一人東洋大の鈴木洋仁は「漢字ではなく、仮名主体の万葉集だけは出典元にしないと予想…」と奇妙なことを書いている。『万葉集』は漢字で、部分的には「レ点」があるような、また「不言(言わず)」「未見(まだ見ず)」といった漢文表記を持つ作品である。すなわち「漢字」でできているのである。識者にしては…

麗澤大学の八木秀次はその題詞にある梅を愛でる状況を、白村江の戦で大敗した日本が存亡の危機を乗り越えた状況と比べ、それを中韓のような周辺国との摩擦を乗り越える未来への願望・希望と見たようだ。大東亜戦争の敗戦時にもしも新元号を定めたのならその時にこそ、そう評すべき内容ではないか。現在は国家存亡の時ではないだろうに。元マラソン選手の増田明美は新元号が東京オリンピックが開催される時代にぴったりだといったコメントしている。識者ねぇ〜

こういうコメントを集めてその代表として掲載する産経新聞も学識、見識が十分には見えない。「令学(学ばしむ)」ことが必要なのではないか。

 


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