天皇制を維持すべきか否かの根本的議論を避けるべきではないのでは?

口先の『未来志向』とは裏腹の『復古志向』をフィロソフィーとしているような行動に終始する安倍晋三首相が掲げる改憲案には天皇制に関するものが見えない。しかしその「復古志向」も特定の時代、制度、機構を復古のの対象としているようだ。そう、長州出身の方らしく、明治維新こそ理想と考えているように見える。

昨今の産経新聞を見ても、「海道東征」「神武様の国づくり」「天皇陵を行く」「楠木正成…」などなどが特集され、「教育勅語」は教育に使えるとか、新保裕司のような“明治教”の雑文が頻繁に掲載される。その編集方針が安倍政権に寄り添うものであることが明白である。産経新聞の「正論」での、天皇制に関するものにも特徴がある。

2019年3月13日の「正論」は渡辺利夫による「『一世一元の制』を守り続けよう」だ。いわく「『一世一元の制』は明治の改元以来のものだが、改めて優れた『制度設計』だと思わされる。天皇家の血脈が瞬時たりとも途絶えることなく紡がれていることが証され…」。

この方、拓殖大学の学事顧問というのだが大丈夫だろうか。明治の時に「一世一元の制」を定めたというのだが、それが何ゆえに『天皇家の血脈が瞬時も途絶えずに継承されている』ことを証するのか。明治時代にその制度ができたと言いながら、それが2千年近くさかのぼるであろう、そして証拠もない時代のことを証すると”理解”するとは…。頭の中の論理回路が壊れていると感じさせる。

3月15日の「正論」は百地章の「皇位の維持は男系の検討が先だ」だ、いわく「政府は『男系重視』の立場から、旧宮家の男系男子の中でふさわしい方を皇族に迎えるべく速やかに法制度の検討に着手すべきではなかろうか」。いかにも文科系の人らしい考え方だ。「ふさわしい方」とはどのような人か、そしてそれを選ぶのは誰かに考えが及んでいない。権勢を得るために天皇を担ぎ出すものが現れることは古来まれではなく、現在も将来にも当然考えられることだろう。世継ぎをめぐる争いを防ぐために「長子相続」が歴史的に採用されてきたのではないのか。日本大学の名誉教授にしてこの程度の思考なのか。

3月20日の「正論」は渡辺惣樹の「皇室を後世に残した先人を誇る」だ。いわく「理論的には共和制が立憲君主制に劣ることはない。しかし、筆者には王室を戴く立憲君主国家のほうが安定している(幸せである)ように思えてならない」と。まったくの個人的感想をもって、天皇制という制度の是非、良否を判断するとの基本的誤りを犯しているように思える。君主を戴くのが良い場合も悪い場合も、どのような人が君主になるかで決まるものだろう。それと一系の天皇制の是非は別の概念のものであろうが。武道の流派では後継者を子供からではなく弟子の中で最優秀なものから選ぶのが普通であった。流派の価値がビジネスではなく、武芸そのものにあったからだろう。世襲に意味があろうとは思えない。

さて、天皇の系譜が万世一系と言いたい人がいるのは理解するが、それが事実と思い込むのは間違いである。足利尊氏の足利幕府の「建武式目」には日本の朝廷を「漢家本朝」と記している。武家の公文書の指摘があったればこそ、いやそれが常識だからこそ、北畠親房が天皇の継承に関して反論せざるを得ずに書いたのが「神皇正統記」だったと考えられる。

また、鎌倉幕府の成立以来、六波羅探題〜京都所司代まで天皇たちは武家政権の監視下に置かれていた。つまり日本国を統治などしていなかった。だからこそ「大政奉還」というものがあり、明治維新の時に「王政復古」が叫ばれたのであろう。明治以来のたった150年(敗戦までならほんの80年)の天皇による統治(実態は薩長門閥政治にしろ)に対して武家政権の期間、すなわち天皇が統治していなかった期間は700年弱に及ぶのである。

天皇を神として扱った(扱わせた)明治、大正と昭和20年までの80年間と、象徴天皇といういわば形式的な天皇であった戦後70年間は既に時間的に拮抗している。天皇制を根本から検討すべき時点であるのではなかろうか。安倍晋三首相が力を入れる憲法改正であれば単に自衛隊を憲法に書き込みたいなどという次元の話ではなく、天皇制に関しても議論すべきだと思う。まして皇室に連なるJOCでの竹田恒和氏の扱いや”利用”を目にすればなおさらである。

職業選択や居住地などにかかわる基本的人権を認めない皇族に対し、婚姻の自由だけを認めておいて、今後にわたって天皇にふさわしい候補者を”用意”していけるのか疑問は決して小さくない。

産経新聞も体制の維持、擁護の論調だけに与することを避け、日本国民のために基本的問題を取り上げるべきだと感じる。徹底的なかつ公正な議論の上に日本をどうしていくのが良いかを決めればよいと思う。

 


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