ILC誘致に未練たらたら

ILCとは実験施設である次世代加速器「国際リニアエコライダー」のことである。日本誘致のプランでは岩手県と宮城県にまたがる全長20キロに及ぶトンネルを掘削し、その中に高速で陽子を衝突させる施設を置くというものだ。日米欧が分担する総工費が8千億円にも及ぶということである。そしてまだその費用分担比率も定まっていないとのことだが、35日の当ブログでも取り上げたように誘致国の負担が56割になるとのことだったと記憶する。なぜ誘致国の負担が大きいのかその理由は明らかでない、つまり「誰か払ってくれないか」型のプロジェクトなのだろう。

さて8千億円は巨額である。かつてサハリンから天然ガスを首都圏まで運ぶサハリンパイプライン構想なるものが存在したが同程度の巨額の建設費用が見込まれていたようだ(要確認)。そのサハリンパイプラインの場合、まだ全くの構想段階にもかかわらず、石油資源開発の社長が鉄鋼エンジ会社へ天下った経済産業省出身者をとある料理屋に集め、工事区間の割り振りを決めていたということがあった。

8千億円規模のILCの場合も、トンネル工事担当会社などの調整がすでに行われ、誘致成功に向けての、あの手この手の”運動”やら”口利き”やらが行われていると見るほうが良いのではないか。そういう状況ではまことしやかな顔をした応援団が現れるものだ。

さて、このILC誘致を37日の東京で開催中の物理学の国際学会までに発表してほしいと世界の研究者が願っていると、産経新聞の中本哲也論説委員兼科学部編集委員が述べていた(産経新聞224日)が、文部科学省は「現時点では日本誘致の表明には至らない」としたとのことである。

これに関する伊藤壽一郎記者の記事では、「ILCを誘致できるのは日本だけだ」とあるが、224日の中本記事では、「ILCが日本でなく中国に建設された場合との落差を考えると誘致を見送るという選択肢はありえない」と書いていた。同じ産経新聞社で何と意見の統一が図られていないことか。どちらかが嘘なのであろう。

この伊藤壽一郎記事に続いてその中本哲也の記事が続いて存在する。その見出しは「国際科学都市実現への一歩に」である。見出しというものは一番大事なことを簡潔に書くものである。224日の中本記事のILCの効果、メリットの第一は、「素粒子物理学の分野で国際貢献を果たす」であった。なぜこれが「国際科学都市実現」になってしまったのであろうか。それも単なる「一歩に」とあれば、まだまだ追加の費用が掛かりそうではないか。

新聞が国民のためにあるのであれば、そして新聞社がそのように考えているならば、巨大科学プロジェクトの真実、暗部をこそ取材し、洞察して記事にすべきではないのか。どこか特定のところの意を受けたような記事を目にすると不快感を覚える。

付言する。中本記事には「国際科学都市で生まれる異文化交流は、日本にとって宿命的な課題であるグローバル化を劇的に進展させるだろう」ともある。東北の田舎に、物理の素粒子の専門研究者が集まったからと言ってなぜそれが「日本のグローバル化」を劇的に進展させるんだ?まるでかつての全学連のアジビラの如しである。いやはや!

更にもう一言、日本が地震国であるのを忘れたか?東日本大震災というM9の巨大地震も経験したその宮城―岩手にまたがる20キロにも及ぶ長大なトンネルなど、もともと建設し維持するのに適さないと判断すべきではないのか?「地震で壊れりゃ、また儲かる」なんて言う不埒な声が聞こえてくるような気がしないでもない。

「補足」

ちょっと古くなるが、今年1月27日の産経新聞日曜版に「欧州で新型の加速器構想」なる伊藤壽一郎の記事が掲載されている。日本に誘致しようと中本哲也が主張するILC、20キロのトンネルどころの規模ではない。なんと1周100キロと1いう格段に巨大なものだ。スイスとフランスの国境付近に建設を計画するというのだから地震大国日本に建設するよりはるかに安全だろう。この計画があれば、ILCの緊急性はないのではないか。物理学の研究のためのトンネルであって、トンネルのための物理学研究にならぬように監視が必要だ。

 


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