櫻井よしこの「日本国紀」評が興味深い

百田尚樹の描いた『日本国紀』という本が幻冬舎から発売されている。ベストセラーなのだそうだ。何でも、縄文時代から平成の時代までを取り扱った「通史」なのだそうだ。それにしても『日本国紀』とは大それた題ではないか。『日本書紀』並みの史書と言いたいのだろうか。

125日の産経新聞には横幅1面、縦4段の大広告が載っている。右には大きく「平成最後の年に送る、教科書では学べない日本通史!」とある。どうやら「歴史書」の積りのようだ。

この大広告には二つの評が寄せられている。寄せたのは西尾幹二と櫻井よしこだ。ここでは櫻井よしこの評を紹介しよう。

「『日本国紀』は通史でありながら、日本の教科書があまり深く掘り下げて教えない近現代史に、全500ページの約半分もの分量を割いています。正しい歴史をきちんと教えない現在の教科書に対する怒りが、著者にこの本を書かせたのでしょう。  私は、この本が描く日本の歴史を、ひとつの”物語“として、大変面白く読みました。…」

通史というけれど近現代が約半分ということは、日本の歴史が約2千年だとすれば、明治以降のたったの150年、すなわち全体の最近7.5%の期間の記述が約半分を占めていると説明しているのである。端的に言えば「通史」と言っているが通史などではないと言っているのである。

「現在の教科書に対する怒りが、著者にこの本を書かせたのでしょう」も含意のある文章である。本というものは、特に歴史というものは「怒り」などで書くものではない。「怒り」は客観的考察を失わせるものだ。真実追求の情熱や、真実を皆に知らしめたい欲求こそが特に歴史を書くモチベーションであるべきだ。いうなれば執筆動機がやや歪んでいるように感じる。そして次の文章に櫻井よしこの良心が表れている。

「私は、この本が描く日本の歴史を、ひとつの”物語“として、大変面白く読みました」という所だ。櫻井よしこはこの『日本国紀』を「歴史」としてではなく「”物語“」として読んだと言っているのである。

広告の中の評において、「歴史の本だ」と百田尚樹も、幻冬舎も、この広告には名前が出ていない編集者(有本某)もが主張するものを単なる「物語」とクォーテーションマークまで付して言わば断ずるなど、通常ないことだろう。「評の依頼者」と「櫻井よしこの良心」とのせめぎ合いが伝わってくるようだ。そして安倍政権寄りという共通項を持つ百田尚樹の本に対してこのように櫻井よしこが評したことから、この本は読まないとしていた私の判断は正しかったと感じた。

売れる本イコール名著ではないことは言うまでもないのである。

 


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