国際石油開発帝石のイクシスに商業性はないようだ

驚きのニュースが飛び込んできた。ロイター(パリ)のニュースである。そのタイトルは“Energy group Total sells 4 percent of Ichthys to Inpex for $1.6billion”というものである。そして本文では“following cost overruns”という文が続く。要するにイクシスLNGプロジェクトの費用が許容限度を超えて膨らんだからだというのである。それは、コスト管理ができない国際石油開発帝石に対して堪忍袋の緒が切れたという背景の、大人の表現による説明なのだろう。

元々トタールはインドネシアで国際石油開発帝石の前身とも言えるインドネシア石油資源開発が探鉱に行き詰まってトタールにファームアウトし、オペレーターをトタールに委ねた途端に大成功したという、いわば”無能物語”のような歴史に関係の深い会社である。

全く経験のない大規模プロジェクトのオペレーターに自信がない国際石油開発帝石がトタールに参加を依頼したとの噂を聞く。そして権益30%に見合うトタール社の権益と交換したとか。さらにその権益は実はそれほど価値のあるものではなかったとか、確証はないが業界の噂にはママ、真実が含まれていることが多いので気になる。

さて、イクシスは既に開発も終わり、LNGなどの生産を開始、販売もすでに行われている。これからはキャッシュフローも潤沢な、一番輝かしいフェーズになる筈である。通常このような時期には権益買い増しはあっても権益売却などない。それがあるのは、プロジェクトが操業を続ければ続けるほど赤字を膨らませるプロジェクトの場合だけではないか。かねてからイクシスは採算性などないと言われてきたのだが、それが本当だということをこのトタールの行動は端的に示しているようだ。もっとも国際石油開発帝石は「イクシスLNGプロジェクトは長期に安定した収益を確保できる優良プロジェクトであり…」と1213日の権益取得の発表でも述べているのだが…嘘?

トタールは4%の権益を$1.6billionで国際石油開発帝石に売却するという。2つの面がある。

この売却価格だが、それはイクシスの開発コスト$40billionの4%分に相当する(実際は開発コストがさらにアップしているので、開発コストの負担分以下の売却価格である)。権益取得はただではない。開発以前の探鉱段階のリスク、費用および商業性(利益)見込みに見合うプレミアムが加わっている筈だ。しかも現時点でプロジェクトが優良な商業性(利益制)を持つなら当然その権益価格はそれを反映したものになる。しかし現実の売り渡し価格は開発コストにも満たないものだ。つまりこれからは、トタールがいわゆる“損切り”をしていることが分かる。逆に、イクシスが利益どころではない、将来も赤字プロジェクトであることを示唆しているのである。

また、売却先が国際石油開発帝石であることも問題だ。権益売却はその価格が高いほど売り手にとっては望ましい。開発費の負担分以下で権益を獲得できるなら多くの石油会社が購入を希望する筈だが、現実は元々の売り手にいわば”返品”する形になっている。余程将来性がなくて買い手がつかない権益なののかも知れない。

また、2018年3月期の国際石油開発帝石の連結貸借対照表では「現金及び預金」は2,761億円となっている由。$1.6billionは略略1,800億円だから国際石油開発帝石の購入資金が気になる。逆に国際石油開発帝石の財務上の限界から購入できる権益%が決められた可能性すらあるのではないだろうか。トタールはより多くのイクシス権益を”損切り”でも売却したいのではないかと感じる。今や不良資産と化したということではないか。権益取得後すぐに特損処理した大阪ガスの対応が光って見える。株主はさぞや心配なことだろう。

イクシスの失敗は、開発経験などない国際石油開発帝石にイクシスLNGプロジェクトをさせた、会社のオーナーである経済産業省の大きな失敗である。その程度は、産業革新投資機構関係の失敗などとはけた違いの大失敗なのである。杜撰投融資で廃止となった石油公団から80人もの人間が国際石油開発帝石に流れ込んだと言われる。流れ込んだ先で、今度は杜撰経営をしでかしたというのなら、或る意味で予想通りの失敗なのである。

イクシス、国際石油開発帝石、経済産業省はその能力のなさを世界の石油開発業界に示してしまったようである。まさにとてつもない失点であろう。日本の石油・ガスエネルギー政策にも大きなマイナスとなるのではないか。国会は責任を追及すべきだと思う。

さて、いくつかの報道がある。URLを記しておくので読んでいただきたい。

https://www.reuters.com/article/us-total-australia/energy-group-total-sells-4-percent-of-ichthys-to-inpex-for-16-billion-idUSKBN1OC0SW

https://www.euro-petrole.com/inpex-acquires-additional-participating-interest-in-ichthys-lng-project-n-i-17948

https://www.spglobal.com/platts/en/market-insights/latest-news/natural-gas/121318-total-divests-4-interest-in-australias-ichthys-lng-for-16-billion

https://www.ogj.com/articles/2018/12/inpex-gains-interest-in-ichthys-lng-project-from-total.html

 

以上、急遽予定したブログ記事に差し換えて掲載した次第である。

そして今その続報が入った。もうお話にならない状態にあるようだ。トタールが国際石油開発帝石(=経済産業省)の無能さ、いい加減さに愛想を尽かしたようだ。記事は

Inpex’s Ichthys LNG cost blows out another $US5 billion”と題するThe West Australian1214日付の記事である。この記事によれば国際石油開発帝石はトタールに対し、イクシスLNGプロジェクトのコストがさらにUS$5billion増加してUS$45billionnになると通知したとのことである。2012年始めに開発を決めた時にはUS$34billionだったのだから、コストが32%+も上昇したことになるのである。このコスト管理能力の欠如からは、これからの操業費も当初計画を大きく上回るのが必至と言えよう。

イクシスには、

*陸上LNG製造施設建設の遅れ

*巨大な生産設備(船)の建造の遅れ

*コミッショニングの重大な遅れ

*危険な電気工事でNOPSEMAの査察を何回も受けた

*ダーウィンのLNG製造設備建設に関してのbillion-dollar規模の係争が継続中

2017年には死亡事故を起こし、それ以外にも潜水夫が“不適切な扱い?”により重い潜水病になっている

などの他の問題もあり(あった)、トタールとしても、株主に説明できる状況ではなくなったのではないか。

昔は成果をあげられないビジネスに関して、担当者の資質・能力が原因の場合の表現として「武士の商法」と呼んだ。現在では「役所(経済産業省)ビジネス」或いはもっと端的に「インペックスの石油開発」との言葉が取って代わるのかもしれない。

多くの先人たちの努力を無にするような状況だ。

国際石油開発帝石のHPでの発表は従来同様、「正直なものではない」と見て良いだろう。これでもまだこれからもオペレーターを続けるのだろうか。タオルを投げ込むのは国会議員(国会)の役目ではないだろうか。

The West Australianの記事は以下で確認願いたい。

https://thewest.com.au/business/energy/inpexs-ichthys-lng-cost-blows-out-another-us5-billion-ng-b881050751z?utm_source=emarsys&utm_medium=email&utm_campaign=WestBusiness+14%2F12%2F18

 


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