国際石油開発帝石のイクシスLNG第一船が10月31日に直江津に入港した、それなのに…

10月31日の朝、直江津のLNG受け入れ施設に一隻のLNGタンカーが到着した。国際石油開発帝石が$40billionもの金を掛けたオーストラリアのイクシスLNGの第一船、つまり初出荷したものが日本に届いた瞬間なのである。国際石油開発帝石という経済産業省の支配会社が、いわば廃止された石油公団の不名誉な歴史と評価を払しょくするための大事業が”成果”の端緒を見せた瞬間でもあるはずだ。

そのまばゆいばかりの曙光がさした記念すべき瞬間と誰もが思う時点なのだが国際石油開発帝石の株価は躍動しないどころか、反応すら見せないのである。それが、何度も指摘したイクシスLNGプロジェクトの商業性のなさがマーケットにも広く知れ渡ったことを感じさせる。

オーストラリアでイクシスを纏めた記事が出た。第一船の直江津到着に合わせたOffshore Technologyのレビュー記事(2018年11月1日付)である。内容は以下を読んでいただきたいのだが一部だけ引用しておきたい。

(記事)

https://www.offshore-technology.com/features/ichthys-lng-project/

(引用)

Australian petroleum company Woodside Petroleum first drilled into the Ichthys field in 1980, establishing the Brewster 1A exploration well. In 1998, Inpex acquired the rights to drill the field and soon began exploration endeavours.

かつてこのブログに、「イクシスを発見した鉱区には既にガス発見井があった。そのガス賦存が証明されているところに、『石油が賦存する筈だ』と強弁して、油田発見を目的とするプロジェクトにしか投融資をしない石油公団の投融資を受けて試掘を実施し、業界の誰もが「ガスしかないよ」としたところから『ガスを発見した』と国際石油開発帝石が言った」と指摘した。「そりゃあ、いくらなんでも美しくない振る舞いだ」と当時、多くが感じたものだった。

しかし、会社側発表にはそのようなことは全く出てこない。それどころか、私が書いている、先にガスの発見井があったということを信じない人すらいる様なのである。そこで上に引用した記事を見てほしい。ウッドサイド社が試掘し、ガスを発見したその構造がイクシスそのものだったことが分かるであろう。

イクシスの開発には色々な陰があるように感じる。純粋な石油開発の事業との観点ではなく、石油公団の廃止と受け皿問題、石油開発政策問題、そしてマハカム権益を失うことが分かっていた国際石油開発帝石自身の問題などが絡まっている。

そうでなければ権益取得後に短期間で特損処理した大阪ガスのようなパートナーが出るわけがない。実態は大赤字プロジェクトなのだろう。それを誰も追及しない日本は異常に思える。国会議員もメディアも不勉強が過ぎる。

オーストラリアのメディアはイクシスに関する客観的報道をするが、日本のメディアは官への遠慮、忖度から真実を明確に伝えようとしない。イクシスに限らず、多くの報道が歪んだ情報を流し続けていることがイクシス報道から想像できるのである。

なお、有料記事なので内容は読んでいないが、以下のような記事もある。国際石油開発帝石のプロジェクトマネージメントの能力の低さは今までも随所に表れていたが、まだあるような雰囲気だ。興味のある人は読んでみたらよいかもしれない。

タイトル: Legal disputes cloud Ichthys handover

https://www.upstreamonline.com/hardcopy/1620917/legal-disputes-cloud-ichthys-handover

ここまでブログ原稿を用意した。しかし11月4日朝、たまげるようなThe West Australian のニュースが飛び込んできた。そのタイトルは、

Ichthys $40b project plagued by contractual disputes with operator Inpex and chief contractor JKC”

というものである。さすがに全文を翻訳するのは面倒なので詳細は読者自身で読んで理解して欲しいのだが、冒頭部分だけ引用しておこう。

The $US40 billion Ichthys project that delivered its first LNG to Japan this week is mired in multibillion-dollar contractual disputes between operator Inpex, chief contractor JKC and many subcontractors.

US engineer KBR, a JKC joint venture member with Japan’s JGC and Chiyoda, revealed the full extent of the problems in a filing this week to the US Securities and Exchange Commission.

JKC, of which KBR has a 30 per cent stake, was awarded the contract to build the Darwin LNG plant in early 2012 with the first LNG scheduled for 2016. KBR chief financial officer Mark Sopp told analysts this week that it had claims of about $US950 million against Inpex for changes to the project, equivalent to a $US3.2 billion total claim from the joint venture.

係争金額の巨額さに驚くだけでなく、このような前代未聞の規模の係争を生じた国際石油開発帝石のオペレーター能力の欠如にも驚く。なるほど、直江津に最初のLNGタンカーが到着したのも話題にならぬはずである。このニュースの全文は以下で、

https://thewest.com.au/business/oil-gas/ichthys-40b-project-plagued-by-contractual-disputes-with-operator-inpex-and-chief-contractor-jkc-ng-b881010042z

かつて当ブログでこの国際石油開発帝石のイクシスLNGプロジェクトは「経済産業省の世紀の大失敗プリジェクト」なのではないかと書いたことがある。国際石油開発帝石が経済産業省が黄金株まで持つという完全なる支配会社であることもあって、最終的な意思決定者は経済産業省、すなわち日本政府であるとみなされよう。従って、この係争は日本と米国との間の係争と捉えられる可能性も存在しよう。功名のための火遊びが、母屋を焼く結果を招く典型例になるのではないかと危惧する。

この様な係争がなくても、すでにイクシスプロジェクトはそれ自身で赤字プロジェクトと思われるのである。従って、成り行きによってはイクシスプロジェクトだけの問題にとどまらず、国際石油開発帝石の存立にも関係するかもしれない。立憲民主党も、もちろん自民党も目をつぶって見逃してはならない。国民の税金だけでなく、日本の国際信用にかかわるだけに放置すべきではないと感じる。

 


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