「四島返還の決め手はこれだ」という榊原智の”作文”に見る弱点

産経新聞の論説委員の能力不足は日常的なことなのだが、論説副委員長という論説委員の中でも中心にいる榊原智の「四島返還の決め手はこれだ」と題する一文(「風を読む」9月18日)を読んで、その論理力、洞察力の不足に驚いた。

ウラジオストックにおける東方フォーラムでのプーチン露大統領の提案を受けての、北方領土問題に関してのコメントである。

「そこで北方四島返還に繋がる秘策の一端を披露してみたい」

と榊原智は自信ありげに書いている。産経新聞にそんな知恵者がいたのかと続きを読んでみた。

「北方四島の広さの93%を占める択捉・国後両島はオホーツク海に面しており、この海にはロシアの核ミサイル搭載原子力潜水艦が潜んでいる。北欧のバレンツ海に配備された戦略原潜と並ぶ、対米核攻撃用の虎の子だ」

オホーツク海にロシアの核原潜が潜んでいるのはその通りだが、それが北方四島の中で国後・択捉がその大部分の面積を占めるのと何の関係があるのだ。原潜のひそむオホーツク海は千島列島、カムチャッカ半島、ロシア大陸、サハリンそして北海道によって取り囲まれている。北方四島はその微々たる一部に過ぎない。単なる意識過剰というより、分析力、考察力が不足なのではないか。無関係の文章をさも関係ありそうに、読点で結ぶとは、基礎的な部分に欠陥が見えるようだ。

「では日本はどうすべきか……有事には北方領土を利用せずともオホーツク海に潜むロシアの戦略原潜とそこから発射される核ミサイルを迅速に無力化できる態勢を黙って整えればよい。これは専守防衛に反しない。共同経済活動よりも有効な返還促進策であり、対ロ交渉が進むこと請け合いだ」

との結論部分は、読むに堪えない。こういうものを仙台弁では「あぺとぺ」と言うんじゃなかったか。支離滅裂と言ったらよいのか…

北海道に対潜水艦基地を設置したのでオホーツク海に潜むロシア原潜を無力化できるようになりました、となれば北方四島が返還されると言っているようである。違うだろう、それが意味するのは、それは、日本(日米)はオホーツク海のロシア核原潜対策用の軍事基地目的での北方四島は必要なくなったと宣言することではないのか。すると四島が返還されると言うのか。馬鹿も休み休み言え。ロシアにとって国後・択捉が必要でなくなるとでもいうなら別だが。。

ロシアが国後択捉の保有にこだわるのは海峡の自由航行が目的なのである。海峡の片側、或いは両側が敵国であれば、海峡封鎖が行われる可能性が高い。オホーツク海を囲む陸地は数多あれど、オホーツク海から太平洋に出入りするための海峡は国後、択捉に限定されるのである。海峡は千島列島にいくつもあるが、冬季に結氷しない海峡が国後、択捉島の所に限られるのだという。原潜だけではなく、ロシアの艦隊が太平洋に進出できるかどうかにかかわる極めて大きな軍事地理的位置にあるのである。

だからこそ、ソ連は不可侵条約違反との汚名も顧みず、国後、択捉に侵攻し、軍事占拠したのではないか。また、国後、択捉に米軍基地が出来ることに異常な警戒心を持つのである。北海道北岸に米軍基地が出来たとしてもロシアはそんな拒否反応など示すまい。

国民に間違った印象を持たせるような論説は不要である。フェイクの一つと言えよう。論説副委員長ですか…、このようなものを「北方領土返還の秘策」と言うのが…

艦船の海峡通過の安全確保の観点から、つまりその軍事的価値から、ロシアにとって南サハリンと国後・択捉は絶対手放せないものなのだ。

 


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