園翁自伝(石油資源開発時代回顧録)(155)リザーバーシミュレーション

天下りの素人社長が騙されるものにリザーバーシミュレーションというものがある。役人は文化系、理科が分からないから法科に行ったなんて連中がほとんどだ。技術で世を渡る会社に天下っても、何もわからぬ説明を聞いて「それでいいんじゃないの」なんてことしか言えない。

分かるのは説明用の資料が綺麗にカラー刷りで出来ているかどうかぐらいだ。そんな能力で経営判断するというのだから間違いだらけなのは誰にでも想像できるだろう。

リザーバーシミュレーションとは、ある貯留層の中で、石油、ガス、水と言った流体がどのように流れて行くかをモデリングすることである。貯留層を何百何千という小ブロックに分割し、それぞれのブロックの特徴、例えば、貯留層の厚さ、孔隙率、浸透率、地層流体の性状、性質などなどを入力した上で、配置した生産井からの生産による圧力変化などによって将来どのように生産量、生産物が変化していくかを計算するものである。注意すべきは「計算する」のであって「予測」しているのではないことだ。

貯留層の分割だが、何百、何千などと聞いてそんなに多くのセルに区分したのだから計算精度も上がったに違いないと感じる素人も多い。それを何十万に分割したとしても入力データが数坑の坑井データと流体データであれば、20程度の分割と何ら精度は変わらないのだ。統計学、サンプリング理論、近似法(内装、平面近似、曲面近似など)などに全く知識のないものなど、騙されたことにすら気が付くまい。

実際、油田ガス田でのリザーバーシミュレーションでも予測と実績が合致している例などまずお目にかからない。合致しているように見える場合でも、あり得ないGORを想定して形だけあっているといった、物理的に無意味な一致を求めた結果であることが多い。通常の砂岩貯留層の場合でもそうなのである。

ではフラクチャーリザーバーの場合のリザーバーシミュレーションはどうすればよいのだろうか。これには生産部が大きな興味を示していた。経験がないばかりか、想像すらできなかったからである。岩石物理学の知識など持ち合わせていないのだから、先ずフラクチャーというものすらよく分かっていなかったのである。

勇払検討チームとして、フラクチャー型リザーバーにおけるシミュレーションモデルについて調査することになり、カナダと米国のユタまで調査団を派遣した。ジャペックスUSから生産屋の井上(ケイスケ)が現地参加した。

コンサルタント会社の説明では、結局坑井間については適当に想定するほかないということだった。これでも科学か?と感じる代物だったが、生産技術などその程度のものだったのだから当然といえば当然だった。数字の遊びに近いというより、遊びそのものの様だった。

生産屋の井上が「It is so subjective!!」と叫んだのを今も覚えている。

米国のユタ州のソルトレイクでの現地のフラクチャー型油田の操業者とのミーティングでは、

「何故そんなシミュレーションなどするのか。どうせわからないんだから、そんな金があるなら1坑でも多く坑井を掘削して生産量を上げるべきだ」

との主張がなされた。ストリッパーウェルでも生産し、即原油を販売できる米国の石油産業の環境がその意見には反映されていた。

結局、役に立つような知見は全く得られなかったが、何処も随分いい加減な取り扱いをしているということが分かったのが収穫だった。この調査には本社から安楽が加わっていた。

リザーバーシミュレーションが信頼できぬことはずっとのちの勇払で証明されているのではないか。後で示す埋蔵量算定の所で詳述するが、勇払のガス埋蔵量は原始鉱量で70億㎥と算定したのである。生産データが入手できた後年、生産部の山田某がリザーバーシミュレーションの結果として200億㎥の埋蔵量があると、それも自信満々に報告し、それを信じたが故に過剰設備投資をしたと聞いた。説明内容の理解が出来ぬから、態度尊大を自信満々と見間違うのであろうが、それを指摘し、止められない生産屋しかいない会社としての能力に大きな問題があろう。本当に石油開発の知識経験のあるアドバイザーを社長の脇に置いておけば多くのミスジャッジは防げたはずなのだが、人事部まで(中央省庁の如く)データに手を加えるのでは天下りには社員の本当の能力など把握できまい。結果的に、高利益をもたらす筈の勇払はプロジェクトベースで赤字だったのだろうと思われる。勇払検討チームの成果、が無に帰したのを残念に感じる。次回は埋蔵量算定について語ろう。

早いもので今日はもう重陽の節句である。酒を飲まぬので菊酒にも縁がない。

 


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