園翁自伝(石油資源開発時代回顧録)(138)オマーン政府からのヘッドハンティング

先にジャペックスオマーン社の有馬社長から技術的貢献と会社再建への経済的貢献に対して表彰して戴いたことをブログに書いた。当時のオマーン政府内でも、シェルが探鉱して、放棄した鉱区で油田を発見開発したことは大ニュースであったらしい。他にはオキシデンタルがサファーという油田の開発をしていたけれど、オキシデンタルが世界の石油開発業界でインディペンデントと呼ばれる中堅企業であるのに対して、石油資源開発という名もない会社がそれに伍す成果を上げたのが注目を浴びた。しかも地震探鉱データから層位封鎖鉱床の埋蔵量評価まで行うという新技法を開発し、使って、オキシデンタルを超える効率的掘削法も駆使してという点は驚きを以て受け止められていた。

生産も順調に行われる頃、探鉱屋の出番もなくなったので6年間のオマーンプロジェクトに別れを告げ、石油資源開発に復帰する時期に来ていた。具体的なことは決まってはいなかったがそんな話がオマーン政府にも伝わったのであろう、石油省のフセイン局長から会いたいから来てほしいとのメッセージが入った。マスカットに出向き、石油省を訪ねた。

フセイン局長は西欧人とは異なり、静かに優しく手を握る。そして、聞き取りにくい吃音気味の英語で、これまた優しいトーンで話す。

「石油資源開発に近々復帰すると聞いたのですが」

「開発も終了し、生産も順調です。探鉱屋としての仕事は、追加探鉱が行われない限りなくなってしまったのです」

「追加探鉱はしないのですか」

「した方が良いと思います。ダリール型の油田はダリール一つであるわけがありませんから。しかも地震探鉱データから概略の油田候補位置が分かる方法を開発したのですから。しかし、石油公団が積極的ではないのです」

「我々は、撤退が殆ど決まっていたのをあなたが留め、探鉱を継続し、ダリール油田として結実させたことを大きく評価し、感謝しています。PDO(シェル)が独占してきたこの国の石油業界に大変革をもたらしたと言っても過言ではありません」

「その様な評価を戴きありがとうございます」

「もしあなたにオマーンでの仕事を続けたいとの希望があれば、オマーン政府としてそのように石油資源開発に働きかけても良いと思っています」

「ありがとうございます。しかし会社が探鉱継続が出来ない状況ではオマーンにとどまってもすることがありません」

此処まで会話が進んだとき、フセイン局長は傍にいるマドハバらのアドバイザーと目配せをした。

「活躍の場は提供できます。ジャペックスオマーンでの仕事がないなら、いっそ我々オマーン政府のために働いてみてはいかがですか」

「それはどういう意味ですか」

マドハバが口をはさんだ。

「我々と同様にオマーン政府のアドバイザーにならないか、ということなんだ。我々アドバイザーたちは皆賛成している。PDOの石油開発にも大いに意見を言ってほしいんだ」

当時の私は、矢部孟のパワハラのために潰れかけのオマーンプロジェクトに出されたことを知らなかった。知っていたらこのオファーを受けた可能性が高い。しかし知らなかったが故に、石油資源開発がもっとまともな会社だと思っていたがために、このオファーを最終的に断ったのである。この時会社を辞めて、インターナショナルな探鉱屋になっていたら全く異なる人生が展開したであろう。YOSUKEやROKUSUKEになど到底理解できない世界の話である。日本国内の出入りの業者と酒を飲み、接待を受けるのを喜びとする小さいものには想像も出来まい。

【お知らせ】

かつてブログ上に連載小説として掲載した、石油開発業界での調達に関する闇を描いた作品を、校正をやり直した上でこの度アマゾンで電子出版した。『調達の闇(1)「天井裏」』および『調達の闇(2)「お脈見坊主」「秀頼」』(arakahiブックス)である。どのように調達が闇の世界で進行していくのか、フィクションではあるが、その世界を知らなくては描ききれない生々しさをお楽しみいただきたい。新聞などの報道の裏読みにも参考になるのではないかと思う。いずれ石油開発プロジェクトの発掘・成立の裏側をノンフィクションで、また推定部分の多いものはフィクションとして書こうと考えている。一皮、二皮剥いた時に現れる醜怪な姿に驚く人が多いだろう。

 


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